(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.025_対案

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会議室に入るや否や、里中部長はオレたちに頭を下げた。

「まず本日の打ち合わせの前に謝罪を。御社で見ていただいているオンラインゲームについて、弊社の佐伯がキャンペーンを打つ事前連絡を怠ってしまい大変ご迷惑をおかけしました。」

そういえば、そんなことあったな。

ハードウェア障害でダウンしていたサーバをオレの「蘇生(リバイブ)」で復活させ、なんとか負荷に耐えることができた一件のことだ。

「いえいえ、突然サーバの負荷が上がり驚きましたが、今回はなんとかキャンペーン中の負荷にも耐えることができました。」

金内部長が、里中部長の謝罪の弁に応えながら話を続ける。

「それでですね、里中部長。お電話でも話した通り、今回のキャンペーン中は何とか耐えられたサーバですが、そろそろ限界が来ています。本日は、これを打開するためにクラウド化の提案資料をお持ちしたので説明させていただきます。」

里中部長は頷くと、真木さんが印刷してきた提案資料を受け取った。

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真木さんは、非常に熱心に、そして分かりやすく提案資料の内容を説明した。途中、里中部長から質問があったが、ちゃんと答えることができている。

「なるほど・・・御社の提案はよく分かりました。今のサーバをクラウド化する価値は大いにありそうですね。」

里中部長が提案資料に視線を落としながら、そう話す。おしっ!感触よさそうじゃないか!

「ただ、懸念点が一つ。それも重大な。」

視線をまっすぐオレたちに向けた里中部長は、話を続ける。

「正直なところ、この前のキャンペーン効果は弊社としては想定を大きく下回る結果でした。」

なっ!?

真木さんと金内部長の顔が曇る。里中部長は気にせず、淡々と話す。

「弊社の想定したキャンペーン効果だと、この前実際に増えたアクセス人数の倍は見込んでいましたので、想定キャンペーン効果を得られなかった要因は大きく2つだと思っています。」

「要因その1は、キャンペーン自体の内容がユーザにヒットしなかった。この場合、キャンペーン内容を改善することで、より多くのユーザがアクセスしてくれる可能性はあります。」

「要因その2は、そもそも今のオンラインゲームがトレンドではなくなってきているということ。」

なるほど・・・じゃあ里中部長の想定だと、本当はもっと負荷がかかるくらいのユーザがアクセスしてきてほしかった・・・ということか。

仮にあの時、もっとユーザ数が増えていたらオレの魔法を使っても、太刀打ちできなかったかもしれない。

「里中部長・・・それで、御社は2つ考えられる要因のどちらだと考えているのでしょうか・・・?」

真木さんが真剣な顔で質問する姿を見て、里中部長も真木さんの方向に向き直った。

「結論から申しますと、要因その2だと考えています。サービスを始めて約7年。オンラインゲームとしては長命ですが、ユーザインターフェース含め、時代遅れだと言わざるを得ません。」

真木さんはガックリとうつむいた。

くそっ、真木さんの提案自体は決して悪くないはずだ。なんとかして提案を採用してほしいが・・・

オレに出来ることはないか?オレは頭をフル回転させて考えた。

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!!

そうだ、真木さんが説明の中で話していたように、クラウド化することで今の運用費用を抑えることができると言ってたな。

だったら、クラウド化した後に浮いてくるお金を使い、オンラインゲーム自体もリニューアルしたらいいんじゃないか?

「里中部長!」

オレは里中部長に、クラウド化することで浮いたお金をオンラインゲームの改修に当て、今の時代にあったオンラインゲームにしてはどうかと話した。

「なるほど、それは一理ありますね。クラウドへの移行費用で一時的にコストはかさむが、長いスパンで見ると運用コストは大きく削減できるでしょう。そこで浮いた費用でこのオンラインゲームを改修する価値はありそうですね。」

里中部長も同意を示す。言ってみるもんだな!

「この件は、今この場で決めるには難しい事案なので、検討させていただき、後日改めて会話させてください。」

こう言い残し、里中部長との会議は終わった。

ファインダーシステム社に戻る途中で、金内部長が労いの言葉を真木さんにかけていた。

「真木、今日のプレゼンは良かったぞ。お前の提案がキッカケで、提案どおりの結果とはならなかったが、クラウド移行案件の可能性は残ったし、もしかするとオンラインゲーム自体の改修にも手を出せるかもしれないな。」

「はい・・・里中部長の発言を聞いたときは、もうこのオンラインゲームはオワコンだと言われた気がしてガッカリしましたが、芸満(ゲイマン)先輩が対案を出してくれて本当に助かりました。」

オレは照れ隠しとばかりに、鼻の頭をポリポリとかく。今回もなんとか真木さんの役に立てたようだ。

これまでは障害対応や佐伯の不正暴露など、ピンチになっても魔法の力を借りて何とかやり過ごしてきたが、今日のような純粋な話し合いでは出番すらなかった。

SEとして頭を使って勝負しなければならないので、この先も真木さんを支えられるだろうか・・・

オレが不安に思っていると真木さんがオレに話しかけてきた。

「芸満(ゲイマン)先輩、会社に戻ったら少しお時間いただけますか?先ほどの打ち合わせで出たクラウド移行後のオンラインゲームリニューアルの件、もう少し具体的にした方がいいかなと思って。」

・・・ふっ。どうやら、オレはとんだ思い違いをしていたようだ。

オレは真木さんを支えなきゃという考えて頭がいっぱいだったが、真木さんは彼女なりに考えをもって前に進もうとしているじゃないか。

何もオレ一人で全てをしょい込む必要はないんだ。

「真木さん、いいねー!もちろん、一緒に検討しよう!」

オレは笑顔で真木さんのお願いに応えていた。

vol26.へ続く