(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.031_課題

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翌日、オレと神宮寺さん(ミカエル)は時間差でファインダーシステム社に出社した。

別にやましいことは何もないのだが、変に噂が立っても面倒なのでね。

「真木さん、神宮寺さんおはよう。」

オレは神宮寺さんが出社後、20分くらい遅れてオフィススペースに入った。

おっ、真木さんと神宮寺さんは昨日の歓迎会の効果か、早速仕事の話をしているようだ。よかった、よかった。

「芸満(ゲイマン)先輩、おはようございます!早速なんですが10時から金内部長も含めて、オンラインゲームのリニューアル案を見てもらいたくて、お時間ください。」

「もちろん!10時から了解です。ところで、神宮寺さんには早速、お仕事の説明をしてるのかな?」

オレが真木さんに尋ねると、ディスプレイを凝視していた神宮寺さん(ミカエル)が、ガバっとこちらを向き、勢いよく答えてきた。

「はいっ、真木先輩に10時から会議で話し合うオンラインゲームの概要を教えてもらってました!」

おぉ!じ、神宮寺さん(ミカエル)ヤル気満々だな。

そういえば、俺もオンラインゲームのことなんて全く分かってないから概要くらい教えてもらおっかな。

「真木さん、その説明・・・オレも交ぜてくださいっ!」

真木さんは快く応じてくれ、神宮寺さん(ミカエル)とオレに丁寧にオンラインゲームの概要を教えてくれた。

神宮寺さん(ミカエル)は、「今更ぁ?」みたいな目でオレを見ている・・・すみません・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

10時になり、真木さん主催でオンラインゲームのリニューアルプランの検討会が開催された。

出席者には金内部長をはじめ、開発部のメンバーも数名集まっている。

基盤部からは真木さん、神宮寺さん(ミカエル)、そしてオレが出席した。

リニューアル案は真木さんが叩き台となる資料を作り、真木さんが考えるリニューアルプランをベースに全員で意見を出し合い、ブラッシュアップしていった。

いやぁ、よくよく考えたらこういう会議に出席するのは初めてだ。

意見が異なる各参加者を尊重しつつ、話題が発散しないように上手に会議をコーディネートする真木さんは流石といえる。

会議は約2時間ほどで終わり、開始当初に使った資料は参加者全員の意見をうまく取り入れ洗練されたものになっていた。

会議が終わり、金内部長が真木さんに声をかける。

「真木、今日の会議すげぇ良かったぞ。大抵、開発部も交えて会議をすると荒れたり、意見がまとまらないことが多いんだが、こんなに濃い議論を交わし合った実りある会議は久しぶりだったぜ!」

「わっ、ありがとうございます!私もとても良い会議になって安心してます。私だけだと気付かなかった案なども出てきて、すごく勉強になりました!」

「うんうん、真木の巧みなコーディネートのおかげだな。あとで俺の方から里中部長の予定を聞いておくから、また連絡するよ。」

金内部長は真木さんの肩をポンと叩き、奥の席へと戻っていった。

「ふぅ・・・ひとまず資料もまとまって良かったぁ・・・芸満(ゲイマン)先輩、神宮寺さんは何か気になるところなかったですか?」

自席に戻り、紅茶のペットボトルを飲みながら、真木さんはオレと神宮寺さん(ミカエル)に質問してきた。

何か気になることでもあるのだろうか?オレは特にないけど。

「あの・・・ごめんなさい。ちょっとだけ気になる点が見つかったので聞いてもいいですかぁ?」

神宮寺さん(ミカエル)が恐る恐る、真木さんに質問をする。

「もちろん、神宮寺さんの気になったところ教えてほしいな。」

「えっと、さっきのリニューアル案のアイデア出しの中で出てきた移行スケジュールについて。」

「今のオンプレサーバたちからクラウドへの移行は最低でも半年、そこから今日整理したリニューアルプランまで反映させるとさらに1年で合計1年半のプロジェクトになる認識です。」

「その間は、今のサーバ構成のままユーザ数を極力減らさずに、うまくキャンペーン内容も打ちながら運営していかないと・・・つまり、リニューアルが完了した時にユーザが離れてしまっていることがないようにしなきゃいけないと思います。」

な、なるほど・・・さすがは天使・・・

知能も高いからか非常に確信を付いた指摘だ・・・

「神宮寺さん、そうなんだよね。実は私もそこが一番の課題だと思っている。実はこの前、キャンペーンを打ったんだけど、期待どおりのユーザ数が集まらなかったし、実際のところ少しずつユーザ離れが始まっているんだと思う。」

「なので、ここから約1年半の間で、なんとかユーザ離れを食い止められるかがリニューアル成功のカギだと思っているの。」

す、すごい。二人とも意見が一致した。

それはそうと、二人の言っていることは正論なのだが、実際に約1年半の間、極力ユーザ数を減らさないようにするには、定期的なキャンペーンを打ったり、ゲーム内容のアップデートをしていく必要がある。

だが、キャンペーンやアップデート直後は、この前のような一時的な負荷急増が発生するから、万が一にもサーバダウンさせてしまうと一気にユーザ離れに繋がるという諸刃の剣のような対策を続けていくことになるな。

以前、オレはサーバの処理能力を上げるために「五色乃衣(ペンタコーディング)」という魔法を使ったが、この魔法だけでは太刀打ちできないくらいの高負荷な状況が出てくるかもしれない・・・

無事にリニューアルまでに1年半を乗り切るには、オレがもっと成長する必要がある・・・

オレの脳裏には再び「大賢者」の文字が浮かび上がってきていた。

vol32.へ続く