(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.012_履歴

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「大賢者・・・」

オレは思わず、その職業を口にしていた。

大賢者とは、賢者の中でも突出して優れた者だけに許される職業だ。

大賢者の条件は、主に下記のような実績を示す必要がある。

  • 賢者レベル55以上
  • 魔王もしくは同等のモンスター討伐の実績
  • 大賢者転職クエストのクリア(全10クエスト)

はい、ムリゲー。

現時点で何一つ当てはまってないし、達成できる気がしない。どれだけの歳月と努力を重ねないといけないんだ・・・

そうだ。圧倒的に高い大賢者ハードルを前にオレは早々に諦めて、これまで現状の賢者という職業に甘んじてきた。

だが、勇者、戦士、魔法使いの皆にレベル20に向けて頑張ろうと提案し、受け入れてもらった以上、オレもそれなりに努力する姿を示す必要がある。

し、仕方ない・・・

「わ、分かった・・・結構ハードル高いけど頑張ってみることにするよ。」

オレは勇者たちを前に、大賢者になるために努力することを約束した。

「よしっ!じゃあ、早速明日は手始めに街の人たちが困っているゾンビ退治に行こう。」

勇者がパチンと手を合わせ大声で話す。

ゾンビは今いる町から1時間ほど歩いたところにある沼地に住み着いたモンスターだ。

まぁ、ゾンビだったら今のレベルのパーティーにはちょうど良さそうかな。

明日やることが決まり、各々は部屋に戻った。オレも宿の一室に戻り、入れたてのお茶を飲みながら一人つぶやく。

「やれやれ・・・まさか大賢者を目指すことになるとは・・・」

オレは荷物の奥底にしまってあった「大賢者へのステップノート」を取り出した。

これは賢者になる時に配布されるノートで、大賢者に自分自身がどの程度近づけているかが分かるように達成具合が自動的に記録されるようになっている。

ちなみに、現時点での「大賢者になる条件」達成具合はこんな感じだ。

大賢者になる条件達成具合
賢者レベル50以上32/55
魔王もしくは同等のモンスター討伐の実績0
大賢者転職クエストのクリア1/10

いやぁ、改めて、大賢者への道のりは遠いなぁ・・・

・・・・・・

・・・・・・

・・・ん?

・・・・・・

おかしい。

なぜか、大賢者転職クエストの1つをクリアしたことになっている。

なになに・・・オレは「大賢者へのステップノート」に自動記入される履歴を見てみた。

悩むるる民 10,000人を救うべし。

フリオ13年 5月24日 Complete

大賢者へのステップノート(クエスト実施履歴の章)

ど、どういうことだ・・・?

オレは民10,000人なんて救った覚えはないぞ・・・

せいぜい、旅の途中で困っている爺さんや婆さんの荷物持ちをしたくらいしか記憶にない。

しかも、フリオ13年5月24日って・・・昨日じゃないか?

昨日オレは何をした?

そうだ、オレは勇者たちと魔王討伐に向かい、死んだ。誰も救っちゃいない。

そして、今日起きたら教会にいた。

・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・・・・

いや、違う・・・

オレは昨日、魔王討伐で死んだ後、別世界でシステムエンジニアとして転生した。

そして、転生して早々、直面したシステム障害をエスティナで復旧させた。

システム障害で多くの人に影響が出ているって、金内部長や真木さん、そして佐伯が言っていた。

もしかすると、オレはシステム障害を復旧させることで、システムを使っている数多くの人間を救っていたのかもしれない。

それと同時にオレは背筋がゾッとした。

・・・・・・・

昨日のことは夢ではなく、現実だったということに。

vol13.へ続く