(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.009_酒場

(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.009_酒場

「芸満(ゲイマン)先輩っ、食べものは何が好きですか?」

真木さんは、会社にいるときより表情が明るい。

普段は控えめにしているが、本当は明るいコなんだな。

「うーん、そうだなー、オレは鶏肉の料理が好きかな。かしこまった所より、ガヤガヤしている方が気楽で好きだね。」

真木さんは、少し考えたのち、行く当てを閃いたようだ。

「なるほど!じゃあ、駅の近くに焼き鳥屋さんがあるので、そこに行きましょう!」

真木さん頼りになるなー、オレは言われるがまま真木さんに付いていく。

それにしても、こっちの世界は暑いな。湿気も多いせいか、じっとりと肌に汗が染みついている。

真木さんは、そんなことも気にならないようで、足どり軽く歩いているように見える。

「真木さんは、その焼き鳥屋ってとこにはよく行くのかな?」

「うーん、わたしは一人では行かないですね。夜はおうちで自分で作るか、カフェとかで軽く食べて帰ることが多いんです。」

へぇ~、なんか女子っぽいね。

そんなこんなで、歩きながら世間話をしているうちに店に着いた。

おぉ・・・このガヤガヤ感・・・いかにも酒場って感じだ。

鶏肉を炭火で焼いているのだろうか?この香ばしい匂いがたまらない。

店に入るなり、真木さんがオレに何を飲むかと聞いてきた。

「あー、なんかメジャーなお酒でも飲もうかな。」

真木さんが笑う。

「芸満(ゲイマン)先輩、また変な言い回ししますねっ。じゃあ、とりあえずビールでいきましょう!」

ほう、ビールというものがこちらの世界ではメジャーなお酒なんだな。早速、一つ情報ゲットだぜ。

カチャカチャ、ドンっ!「へい、おまちぃ!!!」

おぉ、これがビールか!黄金色の液体にシュワシュワの白い泡・・・めちゃめちゃ美味そうだ!

「じゃあ、先輩!今日は一日おつかれさまでした!乾杯っ!!」

「お疲れ!乾杯っ!」

真木さんとジョッキを軽く合わせて乾杯し、オレはごくごくとビールを飲む。

「・・・・くはあっっ・・・・・!!!!!なんだこれ・・・・!?う、うますぎるっ・・・・・!!!!」

ビール・・・最高に美味いです。オレは心から感動した。

「先輩、おいしそうに飲みますねー!」

真木さんも、イイ感じでジョッキの半分まで飲み干している。なかなか良い飲みっぷり。

「いやー、ビールめちゃめちゃ美味しいね!オレ感動したよ。」

「あはは、まるで初めて飲んだような話しっぷりですね。芸満(ゲイマン)先輩って、こんなに面白い人だとは思わなかったです。」

まぁ、ビールが美味しいってのもあるけど、こうやって若い女のコと飲めているのも上手さを倍増させているのかもしれないな(笑)

・・・・・・・

・・・・・・・

そのあと、真木さんと笑いながら、今日起きたことの話や、たわいもない話をした。1時間くらい話したところで、ふとオレは気になったことを真木さんに聞いてみた。

「そういえば、真木さんは何で今の仕事をやろうと思ったの?」

そう。オレがいるファインダーシステム社は、一日ほど働いてみて感じたが、男の社員が多く、どちらかというと体育会系な雰囲気の会社だ。

そんな中、真木さんは大人しいし、お世辞にも体育会系っぽくない。ガツガツ働いている周りになんとか付いていこうと一生懸命頑張っている感じだ。

きっと、それなりに想いがあるからこの会社にいると思い、オレは質問をしてみた。

すると、真木さんは目を輝かせて即答してきた。

「わたし、父親がゲームを作る会社で働いていて、そこでプログラミングのお仕事をしているのを見て育ったんです。」

「父は、いつも遅くまで仕事をしていてあまり遊んでもらえなかったけど、「これが父さんが作ったゲームだぞっ!」ってゲームを一緒にしてくれたことが本当に楽しかったんです。それで、わたしもゲームに関わるような仕事をして、世の中の人を笑顔にしたいなーって考えるようになり、今の会社に入ったんです。」

「今は基盤管理部だから、ゲームは直接開発できないけど、オンラインゲームが動く基盤となる部分を見る重要な仕事をしているので、とてもやりがいがあります。」

なるほど、この会社はゲームを作る会社だったのか・・・今・・・知ったぜ。

「そうなんだね、真木さんのお父さんもゲームを作る会社で働いていたんだね。」

「そんな芸満(ゲイマン)先輩こそ、どうしてこの会社に入ろうと思ったんですか?」

ギクッ!やばい、オレに質問が返ってくることは想定していなかったぞ。目が覚めたらシステムエンジニアとして転生してましたーてへぺろー・・・なんて言ったら、真面目に答えてくれた真木さんに失礼だ。

どうしよう・・・?

うーん、と唸りながら、オレは元の世界にいた時、なぜ自分が賢者になろうとしたのか今更ながら思い返していた。

vol10.へ続く