(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.004_別人
真木さんに自宅まで送ってもらうことになったが、そもそもこの子はオレのうちを知っているのか?
真木さんに話を聞くと、オレの自宅住所は把握済みとのこと。
ま、まさか実はオレたち付き合ってるのか?
否。
以前、オレ(?)は飲み会の時に泥酔したことがあるらしく、真木さんが上司の金内部長と一緒に送ったことがあるそうな。
魔法のことを真木さんに尋ねようとすると、激しい頭痛に襲われるし、この子や金内部長と飲みにいったことなんて無いのに、そういう過去が存在している。
これはどうみても、オレは別人として生まれ変わってしまったようだ・・・でも、なぜだ?
仮にこれが魔王の呪いだとしても、理解に苦しむ。
そもそも、オレは魔王に目をつけられるような大賢者級の逸材でもなければ、多数いる賢者の中の1人に過ぎない。
あるいは、魔王との闘いで復活できずに本当に死んでしまったのか?
だったら、別の人間として中途半端に生まれ変わるのも理解に苦しむ。
本当に死んだのなら、ちゃんと赤ちゃんからやり直したいっ!
・・・まぁ、今はこの疑問を解決できる材料もなければ、元のオレに戻る手段も見つからない。ひとまずは、ここの環境に慣れるしかないか。
「真木さん・・・ごめん、オレ頭痛がひどくて前のことをあまり思い出せないんだけど、オレってどんなキャラだったけ?」
苦し紛れな質問だが、この世界に存在した芸満(ゲイマン)という人間を探るところから始めよう。オレが芸満という人間になったことで、あまりにもキャラ変してたら面倒だしな。
真木さんは、不思議な顔をしながらも答えてくれた。
「昨日までの芸満(ゲイマン)先輩は、なんというか・・・決められた範囲の仕事だけ淡々とこなす人かと思っていました。具体的にはシステムが稼働しているハードウェアやOS周りの運用業務を担当されてますよね。」
ハードウェア?OS?
何のことだからサッパリ分からないが、とりあえず、オレはハードウェアやOSの面倒を見ることだけを作業範囲として仕事していたらしい。
「だから、芸満(ゲイマン)先輩が、突然寝てしまって起きたと思いきや、急にアプリケーションのコードを修正しちゃったんで、本当にビックリしたんですよ。でも、みんなが困っている時に、最善を尽くせる人ってステキだと思います。」
何度も言っているが、オレはエスティナを唱えただけである。
仕事以外のところでいうと、芸満という人間はこれといった特徴もない普通っぽい人とのことだ。
なるほど、とりあえず、普通っぽくしておけばキャラ変したとは思われなさそうだな。
「それより芸満(ゲイマン)先輩、体調は大丈夫ですか?とりあえず、先輩の家についたので私はここで帰りますが、何かあったら電話してくださいね。」
アパートのドア前で、真木さんはオレに念のためと言わんばかりにスマートフォンと呼ばれる機械の使い方を教えてくれた。
スマートフォン・・・これで遠くにいる人間と話したり、文書のやり取りができるのか・・・
こんなもの、オレが旅してきた町や村では見たことがない。
そういえば、ここにはモンスターもいないし、剣や魔法を使っている人間も見かけない。
まさかとは思うが、別人として生まれ変わっただけではなく、異世界に来てしまったということか。
頭が混乱する・・・
真木さんと別れた後、オレはシャワーを浴びて横になった。
とりあえず、元の世界に戻る方法を探そう。一緒に魔王に挑んだみんなのことも気になる。
てっとり早い方法は、死んでみて教会送りになるか試すことだが、もしここがオレのいた世界と異なるならば、死んだらそのまま目覚めない可能性もある。
何か手がかりを探さないと・・・
『ぐぅ~~~~~~~~~~~』
は、腹が減った・・・
頭痛も治まったことだし、ひとまず飯を食うか。腹が減ってはなんとやら・・・だ。
コンロやカップ麺は、こちらの世界にもあるようだな。
『カチャッ』
「あちちっ!!!!」
コンロの火が思いのほか強く、オレは指に軽いやけどを負ってしまった。ダメージ5ってところか。
「ヒール!」
オレは、回復魔法のヒールを自分自身にかける。これ賢者の特権ね。
・・・・・
・・・・・
・・・・・
おかしい・・・ヒールをしたのに・・・やけどが治らない。
vol5.へ続く