(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.034_謎者
神宮寺さん(ミカエル)は真剣な表情でオレを見つめ、彼女が考えた作戦を伝えてきた。
「佐伯が操作しているsaeki-kは真木先輩が操るmakirinによって、かなりHPを削られている状態よ。あたしが操作しているキャラでも、最大出力で攻撃すれば倒せるはず。」
「だが、どうやってsaeki-kを・・・」
オレが神宮寺さん(ミカエル)に尋ねると、向こうの席でmakirinを操作していた真木さんがこちらにやってきて神宮寺さん(ミカエル)の作戦に乗ってきた。
「神宮寺さん、私のmakirinを盾にしてsaeki-kの攻撃を受け止めるわ。その隙に攻撃してもらうしかないかな。」
なるほど。でも、makirinもひん死だけど・・・
「もちろん、私はPKされてしまうけどゲーム内の話だしね。それよりも、神宮寺さん・・・saeki-kを倒すってことはあなたのmichaelがPKになってしまうのよ?」
真木さんは、自身のキャラが殺されることよりも、神宮寺さん(ミカエル)の操作キャラがPK扱いとなってしまうことを心配していた。
「真木先輩、あたしのこのキャラはまた別キャラで作り直すからイイんです。最近あまりプレイしていませんでしたし。それよりも、あたしはsaeki-kをこの手で葬りたいんです・・・!」
言っていることが穏やかではないが、神宮寺さんはPKになってでも佐伯に天誅を下したいと言った表情だ。さすがは天使。
神宮寺さん(ミカエル)の決意に満ちた表情を見て、真木さんも作戦決行の決意ができたようだ。
「分かったわ、神宮寺さん。やりましょう。・・・それと、一緒に戦ってくれてありがとうね。」
「はいっ!じゃあ、いきましょう真木先輩!」
真木さんと神宮寺さんは自席のディスプレイを再度睨み、佐伯・・・もといsaeki-kとの決戦に挑む。
真木さんの操るmakirinは攻撃する構えを見せながら、saeki-kに突撃する。
『ぶぁぁぁぁか!!!何度も貴様の攻撃なんぞ受けるかよぉぉぉぉぉ!!!!!』
saeki-kは素早くmakirinの後ろに回り、最大出力で攻撃してきた。
ずごぉぉぉぉぉぉん・・・・
強烈な閃光が画面内を覆い、クレーターのできた地面にmakirinが倒れていた。
『っしゃあぁぁぁぁぁぁ!!!神聖装備キャラ1匹討伐完了ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!乙乙乙っ!乙カレーっス!!』
悦に浸りキマっちゃたsaeki-kの後ろには、静かに最大出力の攻撃準備を完了させたmichaelが槍を構えていた。
『なっ!?雑魚がぁぁぁ!?いつの間にぃぃぃぃぃ!?』
ズオッ!!!!!
saeki-kは攻撃を避ける隙もなく、michaelの最大出力で放った槍がsaeki-kを貫いた。
やった!!!佐伯・・・もといsaeki-kを倒したぞ!
・・・・・・
・・・・・・
しかし、saeki-kは倒れておらず、michaelへの攻撃態勢へと入っていた。
なんとHPが1だけ残っているじゃないか!なんというしぶとさ・・・
『ふぃぃぃ・・・かっ・・・かかかかっ!!!運が無かったねぇ!私を倒す作戦だったみたいだが、雑魚った攻撃のおかげで生き延びたぜぇぇぇ!!!』
佐伯から勘に触るメッセージがゲーム内チャットで送られてくる。くそっ・・・万事休すか・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
あ、あれ?saeki-kの振りかぶった剣がそのまま振り下ろされずに固まっている?
佐伯も困惑しているようで、チャットでこちらにメッセージを飛ばしてくる。
『こらぁぁ、システム障害じゃねぇだろうなぁ!?私の攻撃ができずに固まっているぞぉぉぉ!!こらぁぁぁ!!!』
うるさい野郎だ。だが、他のユーザは動いているように見えるから、saeki-kだけが固まっているように見える。
そしてsaeki-kのところへ、[%?Ajf\*,m]と読み方不明の謎ユーザがやってきて、持っていたナイフで一突き。
saeki-kを倒した。
[%?Ajf\*,m]という名前のキャラはsaeki-kを倒した後、すぐにゲームからログアウトしたようで画面から姿を消した。
真木さん、神宮寺さん(ミカエル)、オレは何が起きたのかすぐに理解できず、唖然とその光景を見ていたのだった。
こうして、佐伯の暴走を抑え、ユーザは安心してプレイを再開しに再びゲーム内に集まってきた。
それどころか、この件はSNSでちょっとした話題になり、その日にゲームにアクセスしてきたユーザは通常よりも多いくらいだった。
その日の夕方、仕事もひと段落し、オレたちは佐伯の件を振り返っていた。
「あの[%?Ajf\*,m]ってユーザは誰だったんだろうね・・・?おかげで助かったけど、変な名前だったし、すぐにログアウトしちゃったみたいだから少し気味が悪いね・・・」
真木さんが呟く。たしかに、明らかにsaeki-kをPKするためだけに現れたような雰囲気だったな。
ふと、神宮寺さん(ミカエル)を見ると、彼女は険しい表情のままだ。
さっきからずっとこんな感じだが、腹でも空いたのか?
結局、今日は佐伯の件もあり、会議でブラッシュアップしたリニューアル案の開発費用は翌日対応として、それぞれ帰宅した。
ちなみに、神宮寺さん(ミカエル)はオレの家に居候しているので、時間差で帰宅する。
オレは遅れて会社を出て、適当に時間をつぶして自宅に帰った。
ドアを開けると、神宮寺さん(ミカエル)が仁王立ちしてオレの帰りを待っていた。な、なんだ・・・!?
開口一番、神宮寺さん(ミカエル)は思いもよらぬ名前を口にした。
[邪神ティアマト]と。
vol35.へ続く