(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.020_再戦
「きゃあああああああ!!!!!」
町の広場の方から悲鳴が・・・!?
「広場に向かうぞ!!!」
勇者が悲鳴を聞いた瞬間、そう叫び宿を飛び出した。オレたちも急いで勇者の後を追う。
広場につくと、そこには大量のゾンビが押し寄せていた。町の人が何人か倒れている・・・!
「オレと戦士でゾンビを追い払う!!賢者と魔法使いで町の人を避難させてくれ!」
「了解!!」
オレは勇者と戦士がゾンビの群れの中に飛び込んでいくのを見て、町の人を助けに走る。
「うおおぉぉぉ!!ウインド!!!」
オレは立ちはだかるゾンビを吹き飛ばし、倒れている町の人を起こしながら避難させる。
「魔法使いさん、ケガをしている人たちに薬草を!」
「わ、分かりましたっ!!」
魔法使いが薬草を使い、けが人の傷を癒して回る。今のところ死人は出ていないようだ・・・!
教会の中まではゾンビが入ってきていないことを確認し、オレと魔法使いで教会の敷地内に町の人たちを誘導する。
ふぅ・・・これで、避難はひと段落かな。
教会にいる神父さん、それから避難した人の中には戦える者もいるので、オレたちはこの場を任せて広場に戻ることにした。
どぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!!!!!!
激しい爆発音が広場の方から聞こえる、何があった!?
オレと魔法使いが広場に戻ると、そこには赤いローブに身をまとい、煌々と目を光らせた老婆・・・もとい、魔王直属の僕(しもべ)の1人、レーヤが立ちはだかっていた。
広場に立っていた大きな石造が壊れ、そこに戦士が倒れている。どうやら、戦士がレーヤの魔法で吹き飛ばされたらしい。
「大丈夫か!?」
勇者が戦士に声をかける。
「あぁ・・・なんとか・・・レベル上げしてなかったら今の一撃で死んでたわ・・・」
戦士は苦笑しながら辛うじて立ち上がる。
「ヒール!!!」
オレは離れた場所から、ヒールを戦士に向かって放ち、回復させる。
「賢者さんよ!助かった!!」
戦士が再び闘志をみなぎらせる。
「貴様ら・・・またワシの前に現れおって・・・貴様らのせいで、またもや可愛いゾンビが全滅じゃ・・・この前は即死魔法(デス)で一瞬のうちに葬ったが、今度はラクには死なさんぞ・・・・!ジワジワとなぶり殺しにしてくれるわっ!!!」
やべ・・・典型的な悪者のセリフだわ・・・
オレは若干冷めた目でレーヤを見つつも、オレたちのレベルでは到底叶わない強敵ということを思い出し身震いする・・・
「勇者よ、やるぞ!」
オレは勇者に昨日練った作戦を実行する合図を送る。
「OK!!!やるぜー!!!」
勇者が大声を上げて応えると、戦士がレーヤに向かって突撃する。
「馬鹿め!」
レーヤの手のひらが怪しく光り、闇色をした光弾を放つ。
戦士は装備していた光の盾を構え、光弾の衝撃に耐えながらレーヤに向かって突き進む。
そして、血ヘドを吐きながらも、戦士は光の盾でレーヤの体を後ろに押しやる。
「ちっ、こんなことをして何になる!?」
盾で体を押し続けたところでレーヤはダメージを受けない。
それどころからレーヤが体から放つ闇のオーラで戦士のHPは減る一方だ。
「ヒール!!!!」
俺は戦士の背後に立ち、ヒールを連続して放つ。
「ぐぬぅぅぅぅぅ・・・・賢者さんよぉぉ!!!これでもう少し耐えられるぜぇぇ!!!!ゴホっ!!!」
そう、オレたちの作戦は、戦士を使ってレーヤの攻撃の的を絞らせ、その間に勇者が大技である光の一閃(ライトニングバスター)を放つというものだ。
レーヤは戦士が構えた盾によって視界が遮られているため、勇者がどこにいるか把握していない。
勇者は剣を縦に構え、光の闘気を剣に集中させている。
このままいけば、光の一閃(ライトニングバスター)をレーヤにぶち込める!!
そうオレが思った時に、レーヤが動いた!
「こざかしぃぃぃ!!!!まとめて吹き飛べ!暗黒闘気爆発(ダークボマー)!!!」
レーヤの体が闇色に包まれたかと思った瞬間、激しい衝撃が体を襲い、オレたちパーティ一行は吹き飛ばされた。
な、に・・・が起こった・・・!?
手を額に当てると、ドロッとした血がベッタリと付いた。
どうやら、相当なダメージを喰らってしまったらしい・・・
かろうじて意識はあるが、作戦は失敗し、戦士、魔法使いは倒れている。
勇者は離れた場所で光の一閃(ライトニングバスター)の発動準備をしているため、無事だったようだ・・・
くそっ、こんな状態じゃ、勇者の一撃なんてレーヤに当たりっこない・・・どうする!?
ここでパーティ一が全滅しても再び教会に戻るはずだが、町が襲われている以上、オレたちが何とかしなければ・・・
「くくく・・・苦しめ!!ワシに大技をぶつけるための作戦だったように見えるが、どうやら失敗に終わったようだなぁぁ?その光っている剣もろとも、葬ってくれようぞ!」
レーヤが勇者に向かって魔法を放とうとしている。まずい、勇者は大技の準備で無防備だ。
・・・・・・・
こんなときなのに、オレはふとローブのポケットにしまってあったクッキーに手を伸ばしていた。
真木さん・・・ここで死んだらまたSEとして転生するのかな・・・?
だが、町の人を残して死ぬわけには・・・
そんなことを思いながら、ボロボロの体を動かしてクッキーをかじった。
・・・・・・・
・・・・・・・
ズトン!!!!!!!!!!!
その瞬間、オレの体からレーヤの纏う闇色のオーラとは比べ物にならないほど、負に満ちた強大なエネルギーが噴出した。
vol21.へ続く