(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.032_条件
大賢者・・・
そういえば、勇者たちと約束したんだったな。「オレは大賢者になる」と。
あの時は仕方なく大賢者を目指すことにしたが、今ハッキリとそれになる目的を見出すことになるとは。
オンラインゲームのリニューアルが完了するまでの1年半。
これからシステムに起きるであろう様々な苦難の道を支援するために、オレは今より高度な魔法が使えるように成長する必要がある。
「神宮寺さん、ちょっといいかな?」
オレは神宮寺さん(ミカエル)に、大賢者になることを相談するために彼女を休憩スペースに呼び出した。
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「なるほどねぇ、たしかにユーザ数を減らさずにリニューアルを完遂させようと思うと、まさに薄氷の上を進むがごとく負荷や障害との闘いになりそうだもんねぇ。」
「あたしは、芸満(ゲイマン)先輩が大賢者になるのは大いに賛成だよぉ~。あたし自身は攻撃主体の魔法しか使えないから、強力な支援魔法が使えるようになると、なにより、真木先輩の助けになりそうだからねぇ。」
「そうか、賛成してくれるならよかった。んで、大賢者になるにはいくつかミッションを達成する必要があるんだが、ケプラに戻ることはできるか?」
オレはこちらの世界アースにいる時に、睡眠をとることでケプラに戻ったことはあったが、戻る時と戻らない時があったので正直なところ、自由意志で転移する方法は分かっていないのだ。
「ん・・・戻れるには戻れるんだけど、前も言ったとおり転移の力を行使できるのは神だけなの。」
「なので、真木先輩の不安や悩みが薄れている時・・・つまり、邪神ティアマトの力が抑えられていると判断できた時に、あなたが寝た状態になるとケプラに戻してもらえるはずだよ。」
なるほど、それで戻れるときと戻れないときがあったという訳か。
オレには真木さんの心の内を知る術はないが、おそらく真木さんの中で安心できている時にオレはケプラに戻ってきていたんだろうな。
「了解、神宮寺さんの言う通りだとすれば、真木さんの不安や悩みを解消できるようにオレたちが動ければ、ケプラに戻れるってことだね。」
神宮寺さん(ミカエル)は、「そのとおり」とばかりにニコリと笑った。
ということは、リニューアル案の内部会議も荒れずに終わったので、今日の真木さんの感じだとケプラに戻れそうかな。
オレが算段していると、真木さんが休憩スペースに走り込んできた。
「芸満(ゲイマン)先輩!!大変です。さ、佐伯課長と思われる人物がオンラインゲームの中で暴れています!」
ファ!?
佐伯課長といえば、鈴木グローバルテクノロジーシステム社でこのオンラインゲームを企画していた元・担当課長だ。
やつはワザとバグを仕込み、うちの会社のせいにしてコスト削減させようとし、それをもみ消そうとしたことが上司の里中部長にバレてクビになったはず。
今度はオンラインゲームの中で暴れているって・・・どういうことだ?
真木さん、神宮寺さん(ミカエル)、オレはオフィススペースに走り、既に数名が集まっているPC前に行き、状況を確認した。
「こ・・・これは・・・」
オレはPCのディスプレイに映し出されたオンラインゲームの画面を見て、驚愕した。
そこには、「saeki-k」と書かれたキャラクターが次々と他のプレイヤーを殺害している光景が映し出されていた。
vol33.へ続く