(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.030_居候
「じ、神宮寺さんがオレんちに・・・!?」
オレはドギマギしながら再度、神宮寺さん(ミカエル)に確認する。
「そぉだよぉ、だってあたし帰るところないんだもん。さ、行きましょ♪家はどっち?」
オレは動揺しながらも自宅の方向を指さす。
その方向にむかって、神宮寺さん(ミカエル)はオレを引っ張りグイグイと歩いていく。
・・・・・・・
ガチャ・・・バタン。
つ、連れてきてしまった・・・うら若き新人の女子を・・・
もとい、天使ミカエルを・・・
「さて・・・」
神宮寺さん(ミカエル)がこちらに近づいてくる。
えっ、えっ・・・積極的すぎないかい神宮寺さん(ミカエル)・・・
「とりあえず、今日の様子だと大丈夫そうね。」
へっ・・・!?
オレは拍子抜けした顔で神宮寺さん(ミカエル)を見る。ま、そりゃそうか(涙)。
「邪神ティアマトの気配は確かに感じるけど、真木先輩の意識が侵食されている感じはしなかったわ。この調子で、先輩の精神が負の方向に向かないように気を付けていければ、大丈夫そう。」
「そうか、神宮寺さんがそう言うならオレも安心したよ。真木さんと初対面のときの神宮寺さんは緊迫感溢れてたからねぇ。」
神宮寺さんは可愛い頬っぺを膨らませて、もうっと言わんばかりの表情を見せる。
「あたしだって真木先輩を通してとは言え、こんなに近距離で邪神と相対することは初めてだから緊張するんだよぉー!」
「神宮寺さんは、邪神ティアマトと戦うのは初めてなの?」
「そうね・・・邪神とガチンコで戦ったのは神のみ。あたしが生み出されたのは神が邪神を滅ぼした後だからね。」
そうなんだ。そういえば、神話で天使ミカエルが登場するのは邪神が滅びた後の世界の話だったから本当だったんだな。
彼女は話を続ける。
「この前、あなたがケプラで顕現させた邪神は本当にヤツの雀の涙の一部にすぎないの。だからあたしの聖槍(ホーリーランス)でも退治できたけど、本物が出てきたら到底太刀打ちできる気がしないわ・・・」
途方もない次元の話なので、正直オレには彼女の話の真実味が伝わってこなかった。
天使ミカエルと邪神ティアマトの力の差なんて、蟻んこのような存在のオレからすると、どちらも果てしなくデカいのだから。
そうなのだ。オレは途方もなく次元の違う事態に身を投じてしまっているのだ。
オレはレベル32のただの賢者なのに、神話に出てくる神や邪神や天使のゴタゴタ話に知らぬ間に巻き込まれ、いつまにか重大な役割を担ってしまっている。
なぜオレなんだ・・・改めて考えると目まいすら起きる状況だな。
オレの心境を察してか、神宮寺さん(ミカエル)がオレの鼻の頭をツンっとしてきた。
「あはは、今、オレなんかで大丈夫かなぁって思ってたでしょう?大丈夫だよぉ~。芸満(ゲイマン)先輩に邪神をやっつけれるなんて思ってないからぁ♪」
オレは苦笑いする。軽いノリしてるけど、ちゃんと人を見てるんだよなぁこの子は。
「ま、でも芸満(ゲイマン)先輩のおかげで、事実ティアマトの覚醒が抑えられているのは本当。あたしはアナタを一目置いているよん♪」
そりゃあ、どうも。
「さーてと、あたしも疲れちゃったからシャワー借りるね!あ、ここから先はあたしのスペースだから絶対入るなよぉ!」
いや、ここオレんちなんだけど・・・
・・・・・・・・・
神宮寺さん(ミカエル)はシャワーを浴び終えて、部屋に戻ってくるやいなや、「女の子は色々とスペースが必要なんだぞっ!」と謎な論理展開を宣った後、オレは反論の暇すら与えらず家のスペースの2/3を神宮寺さん(ミカエル)に明け渡すことになったのだ。
はぁ、早く帰んねぇかなこの女・・・これから先が思いやられる。
そう思いながら、オレは眠りにつくのであった。
vol31.へ続く