(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.015_依頼
里中部長の顔が一層真剣な顔となり、オレたちを見つめる。お願いとは何なのだろうか?
「実は御社に開発、運用いただいているシステムですが、最近はユーザ数に伸び悩みが出てきています。原因は多々あるかと思いますが、その中の1つが障害発生頻度だと私は考えています。」
ほう・・・オレたちが見ているオンラインゲームが稼働しているシステムは、障害が結構出ているってことか。
そりゃあ、障害ばっかりだと使っているユーザは不満を抱き、ゲームから離れていってしまうのは理解できる。
里中部長は続けて話す。
「障害の原因は、この佐伯のように意図的にバグを残していることで発生してしまったケースもあります。私はこのオンラインゲーム自体は非常によく出来た素晴らしいサービスだと思っているので、今後はこのような障害を撲滅し、ユーザが本当に楽しめるサービスを提供したいのです。」
「それで、私たちファインダーシステム社には、障害件数をもっと減らせるように努めてほしい・・・ということですね?」
真木さんは里中部長の意図を組んで、オレたちファインダーシステム社に期待されていることを代弁してくれた。
「そのとおりです。先日の障害も非常に迅速に対応できた御社だからこそ、お願いしたいと思っています。」
里中部長は、そう言いながらオレたちに頭を下げた。
そういうことなら、システムエンジニアとして協力しないわけにはいくまい。
「承知しました。現状サービス提供しているプログラムについては、引き続き障害が起きても迅速に対応しますし、今ご検討いただいている追加機能の開発は徹底的に品質を確認させていただきますね。」
オレは里中部長の目を見て、ハッキリと言い放った。里中部長はオレの発言を聞き、ニコリと笑顔を見せた。
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鈴木グローバルテクノロジーシステム社を後にし、オレと真木さんは自社であるファインダーシステム社に戻り、金内部長に会議結果を報告した。
「なるほどなぁ・・・佐伯はクビかな。それにしても、うちが開発・運用を任されているオンラインゲームのユーザ数については、伸び悩んでいる件で俺も気になっていたんだ。里中部長の言うとおり、まずは障害を抑制していかないとだな。」
金内部長や真木さんに障害発生の頻度を尋ねると、大小合わせて一か月で数件は出るらしく、他のオンラインゲームを提供しているシステムより格段に数が多いとのことだった。
「まぁ、このオンラインゲームを動かしているシステムも7年前に作ったサーバ上で動かしているからな・・・そろそろ、リプレイスしなければいかんのだが、なかなか予算が取れずに騙し騙し動かしているのさ。」
金内部長が頭をボリボリかきながら話す。
よく分からんが、要するに古い機械の上でシステムが動いているってことだろう。
それでユーザ数が増えると処理が遅くなったり、機械自体が壊れたりしてユーザ影響が出てしまっている・・・といったところか。
あとは佐伯がやっていたように、プログラムにバグを残したままって話もあるから、このシステムは色々と問題だらけということが理解できる。
「あの・・・」
真木さんがソーっと手を挙げる。
「ん?どうした真木。」
「金内部長、芸満先輩。やっぱり7年前のサーバで動かし続けながら障害を減らすのは、かなり難しいと思います。それなら、いっそのこと、クラウド化してシステムを一新するのはどうでしょう・・・?」
クラウド?雲のことか?
俺がポカーンとしている横で、金内部長がうなずく。
「たしかに、真木の提案には俺も賛成だ。実はこれまでも、佐伯の野郎には提言していたのだが、必要ないと拒否されていたんだ。」
真木さんはため息をつきながらも、強い意志をもった瞳で金内部長に話し続ける。
「佐伯課長の時は、このオンラインゲームやユーザのことを真剣に考えていなかったんだと思います。私、里中部長にお会いして提案したいと思います。」
「真木よ、よくぞ言った!クラウド化はうちの会社にとっても大きなビジネスになるし、提案してみようじゃないか。芸満(ゲイマン)よ、お前サポートしてやれ。」
やれやれ、またオレも関わるのか。
クラウドが何なのかも分かっていないが、真木さんが会社の中で優秀であることを知らしめる良い機会だ。
オレも出来ることをやって、真木さんをサポートしようじゃないか。
「分かりました。真木さん、がんばろう!」
「はい、芸満(ゲイマン)先輩!先輩がサポートしてくれるので心強いです!」
オレと真木さんが拳を合わせたその時だった・・・
「システム障害です!サ、サーバがダウンしました!!」
オペレータと呼ばれる、システムを監視しているメンバーが金内部長のところに走って報告しに来た。
「ちぃッ!こんな時にサーバダウンか!状況整理するぞ!!」
金内部長の号令と共に、オレたちはホワイトボードの前に集合した。
オレは何が起きたのか、さっぱり分からなかった。
vol16.へ続く