(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.011_復活
目が覚めるとオレは教会にいた。
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ど、どういうことだ・・・!?
オレは明日、鈴木グローバルテクノロジーシステム社に追加機能の開発費を提示しに行くために、芸満(ゲイマン)宅に戻り就寝したはず・・・
そもそも、オレは魔王の戦いで死に、教会送りになったかと思いきや、なぜか別世界にあるファインダーシステム社のSE芸満芸満(ゲイマン)として転生したはず。
もしかして・・・夢でも見ていたのか・・・?
「賢者さん、起きましたか?」
ふと、棺桶から出ると、勇者、戦士、魔法使いが教会のイスに座って待っていた。
間違いない。ここは元の世界だ。
「賢者さん、早速ですが魔王討伐にもう一度挑戦したいと思います。一緒に来てくれますか?」
勇者がイスから立ち上がりながら大声で話してきた。正気かコイツ・・・?
ドラゴン化した魔王の一撃でパーティは全滅したのに、またすぐ挑みに行くつもりだ・・・
戦士と魔法使いも渋い顔をしているが、特に反論しない。
そうだ。オレたちは勇者に雇われている身。
勇者に悪気がないことは分かっているが、意見を違えるとメンバー交代の可能性もあり、そうすればオレたち冒険者は収入を絶たれてしまう。
今まではオレも自分の考えを表に出さず、勇者の意向に沿う形で生きてきた。
だが、なぜだろう。
気づいたらオレは勇者に物申していた。
「勇者さん、たしかに魔王討伐はイイところまで行ったかもしれない。が、ドラゴン化した魔王に一撃でやられてしまったオレたちパーティはやはり未熟だと思う。ここは、急がば回れでじっくりパーティのレベルアップをやらないか?」
勇者は「確かに・・・」といった様子で上を向いて考えている。
戦士と魔法使いは、驚いた顔をしている。内心、首になっても知らないぞーとでも思っているのだろうか?
考え込んでいた勇者は、ポンっと手を叩き、これまた大声で話し出した。
「賢者さん!たしかにその通りだな!!仮にドラゴン化した魔王を追い詰められても、またその先の変身があるかもしれない。ここは地に足をつけて、確実に進むとしよう。」
おぉ!バカだと思っていたが、ちゃんと勇者は分かってくれたようだ。
戦士と魔法使いもホッとした顔をしている。
「勇者さん、ありがとう。このパーティはまだ若いし伸びしろがある。・・・あ、オレはもうオジサンだけど・・・」
ドっと教会に笑い超えが響き渡る。
・・・あぁ、冒険を始めてパーティメンバーと笑ったことなんてあったっけかな。
皆と笑いながら、オレは内心の変化に少し驚いていた。これまでの自分とは何か違う気がする。
そう、別世界に転生した夢(?)を見た時に、オレは真木さんというコから、「なぜ賢者になったのか?」尋ねられた。
その時に、オレは賢者になることを志した理由、「頑張っている人を支えたいから。」ということを思い出したのだった。
支える手段は魔法ではなくても、姿勢や言葉でも実現することはできる。
もしかすると、オレは今の発言でパーティから外されていたかもしれないが、後悔はしなかっただろう。
それよりも、勇者の意見に只々従い、また魔王に敗れて教会送りになった時の方がよほど後悔・・・というか、不毛感にうんざりするに違いない。
このパーティは停滞せずに前進することができる。
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早速、オレたちパーティ一行は、近くの酒場に入り今後のレベルアップに向けて作戦会議を始めた。
「この前は、魔王のいる場所まであの手この手を使って突っ込んだから、バトル回数も少なかったもんね。」
魔法使いの女のコが本質とも言える発言を繰り出す。
そう、オレたちパーティはあの手この手を使い、魔王のもとまでバトル回数を10回前後こなすだけで臨んだのだった・・・これでは当然レベルアップは見込めない・・・
ちなみに、各々のレベルはこんな感じだ。
メンバー | レベル |
勇者(22歳) | 10 |
戦士(20歳) | 6 |
魔法使い(18歳) | 5 |
賢者(35歳)※オレ | 32 |
今思っても、よく魔王に挑めたなと思う。
「まぁ、無理してもしょうがないから、まずは全員レベル20を目指そう。」
一応、パーティ年長者のオレからも今後の目標を提案する。みな特に異論はないようで、うなずく。
「賢者さんは、もうレベル32だけど目標はどうするつもりだい?」
戦士が痛いところを突いてきた。
そういえば、オレはここ数年目標らしい目標を持たずに漫然と冒険してきたのだった・・・
「うーん、そうだな・・・」
オレが悩んでいるところに、勇者がバっと立ち上がり大声でオレに向かった言い放った。
「賢者さん!大賢者目指しちゃおうよ!」
あまりに唐突な目標にオレは頭が真っ白になった。
vol12.へ続く