(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.035_疑問
「さっきのオンラインゲームで現れた謎のユーザ・・・あれ、ティアマトだよ。」
仁王立ちでオレを待ち構えていた神宮寺さん(ミカエル)は、開口一番とんでもない事実をオレに伝えてきた。
唐突すぎて頭の中に「?」がグルグルと回る・・・
「どうやったのか分からないけど、ティアマトはオンラインゲーム上に入り込み、saeki-kの動きを封じ、オンラインゲーム上のキャラとしてsaeki-kをPKした。一瞬のことだったが、その時に真木先輩から明らかに邪神の魔力が噴き出ていたんだよ。」
マジか・・・俄かに信じがたいが、神宮寺さん(ミカエル)が嘘をついているようにも見えない。
本当のことだと受け止めるべきだろう。
「ティアマトがオンラインゲーム上に影響を及ぼしたということは、真木さんの心が負の方向へ変化したということかな?」
オレが尋ねるも、神宮寺さん(ミカエル)はこわばった表情のまま、頭を横に振る。
「それが謎なんだよねぇ。真木先輩の心に不安感が生じたのは確かだけど微々たるものだったから、それが原因でティアマトの影響が強まったとは思えない。そう、あれはまるで・・・ティアマトがPKされかけたアタシを助けるために登場したように見えた。」
神宮寺さん(ミカエル)が感じていることはオレにも当てはまる。
オレは以前、魔王四天王レーヤに挑んだがパーティは全滅寸前のところまで追い込まれた。
そんな時にオレの身体を媒介して、レーヤを倒したのは他ならぬティアマトだった。
“邪神”とまで言われ、神話の時代から現在に至るまで、人々に恐れられていたティアマト。
だが、「彼女」が取る行動は邪神の異名とは程遠い。いったいどういうことなんだ・・・
「う~ん、こればっかりは今考えても答えは出そうにないわね・・・とりあえず、一度ケプラに戻りましょ。」
そうだった、オレはこれからのクラウド化とオンラインゲームのリニューアルが完了するまでの様々な困難に対応できるように、大賢者を目指すんだった。
「そうだったね、ケプラに戻るにはとりあえず、寝ればいいんだよね?」
神宮寺さん(ミカエル)は頷く。
「本来はこんなことしないんだけど、早いところ芸満(ゲイマン)先輩に大賢者になってもらいたいから、あたしも手伝ってあげる♪」
「ふぁ!?え・・・っと、ってことはケプラに戻ったら神宮寺さんも一緒に冒険するってこと?」
「そだよ~、こんなこと滅多にないんだから感謝してよねぇ~♪」
人生とは分からないものだ・・・
どこにでもいる平凡な賢者だったオレが気が付いたら天使と一緒に冒険することになるとは・・・
そして、憧れの存在でしかなかった「大賢者」を目指すことになるとは・・・
「わ・・・分かったよ。神宮寺さんが一緒なら百人力だ。」
「オッケー♪じゃあ、話がまとまったところで寝ましょ♪」
そういうと、神宮寺さん(ミカエル)はオレの布団にモゾモゾと入ってきた。
ふぁ!?
なななななな・・・・何をしているんだ神宮寺さんっ!?
「もうっ!変なこと考えないでよね!こうやって一緒に寝ておかないと、ケプラに戻ったときにバラバラの場所で転移しちゃうの!また、探すの面倒でしょ!」
な、なるほど。そういう仕様なのね。
神様・・・こんなステキ仕様の転移術を作ってくださり感謝します。
オレは心の中で神に感謝しつつ、隣にいる神宮寺さんの色っぽい香りをすーはーすーはしながら眠りについた。
vol36.へ続く