(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.023_天使
「ちょ・・・け、賢者さん・・・なんかスゲーことになっちゃってるじゃん?」
こんな状況でも勇者は、いつもの勇者だな・・・心の中では楽しんでいるんじゃないかと勘繰りたくなる軽い口調だ。
ちなみに戦士と魔法使いは既に教会送りになったようです。合掌。
それよりも、天から舞い降りてくるのは・・・まさか・・・
オレがその姿を見上げていると、「ソレ」は上からオレを見ながら口を開いた。
『こんにちわ!!芸満(ゲイマン)先輩!驚かしてゴメンなさいねぇ~、ケガは大丈夫ぅー?』
かるっ。
勇者を上回る、その軽い口調にオレはズッコケそうになった。しかも、なぜあちらの世界でのオレの呼ばれ方を知っている?
天より舞い降りた「ソレ」は、よく見ると可愛らしい女のコだ。
金髪のボブに白く輝く美しい羽が何とも特徴的だが・・・
「え、えっと・・・さっきの槍を放ったのは、君か?」
オレは恐る恐る、そのコに話しかける。
『そだよ~、アタシの聖槍(ホーリーランス)をぶち込んであげたんだぁ~』
「ほ、ホーリーランス!?」
隣にいた勇者が仰天する。
「聖槍(ホーリーランス)の使い手といえば、俺が知る限り、ただ一人。神話に出てくる天使ミカエル・・・!」
ミ・・・ミカエル!?
話がぶっ飛びすぎている・・・さっきまで戦っていた魔王四天王のレーヤでさえ、オレたちにとっては強大な存在だったが、それを超越しすぎていて訳が分からない。
オレと勇者が驚きぶったまげているのをヨソに、ミカエルは話を続ける。
『本当は、芸満(ゲイマン)先輩にあちらの世界でティアマトを抑え続けてもらうのを期待していたのに、まさかコッチの世界に連れてきちゃったから慌てて飛んで来たんだよぉぉ~もうっ!』
「オレが邪神ティアマトを抑えるだと・・・?それはどういうことだ??」
オレはあちらの世界でSEとして活動していただけだぞ・・・なぜ、そこに邪神ティアマトの名前が出てくる?というか、オレに抑えられるわけないだろ・・・
ミカエルは呆れた顔でオレの問いに答える。
『もうっ!分かってないんだからぁ!さっき、邪神が言ってたでしょ。真木ちゃんっていう女の子がティアマトなのっ。芸満(ゲイマン)先輩が彼女の不安や悩みを解消してあげることで、ティアマトを抑えることができるんだよっ!』
なにぃぃぃぃぃぃぃぃ!?
ミカエルは話を続ける。
『ティアマトが転生した真木ちゃんっていう女の子は、もともと明るいコでティアマトの意識が顕在することはなかったの。でも、大人になるにつれ、悩みや不安の要素が大きくなって、ティアマトの意識が神にも感知されるほどになってきたっていうわけ。』
「そ、それで、オレが神様に選ばられて、向こうの世界にティアマトを抑えるために転移させられたってこと・・・なのか?」
オレは困惑しながらミカエルに尋ねる。
『そういうことー。ま、なんでアナタが選ばれたかっていうのはアタシにも分からないんだけどねぇ。神のみぞ知るってとこかな。』
ぐっ、一番そこが気になるんだが・・・いや、でも仮にオレがティアマト・・・もとい、真木さんの悩みや不安を解消できなかったらどうなるんだ・・・?
オレの疑問を先読みしたかのように、ミカエルが軽口で答える。
『ちなみに・・・アナタがティアマトを抑えられなかったら・・・真木って女の子の意識はティアマトに乗っ取られる。そして、本当に邪神の力を取り戻してしまったら、こちらの世界にまで再び禍(わざわい)をもたらすわ・・・』
・・・・・・・
「あ、あの・・・オレの責任が超重大ってことは分かりました・・・色々とツッコミどころ満載なんだけど、オレはこれからどうすれば・・・?」
ミカエルはオレの質問にニッコリとした笑顔を見せる。
『もちろん、また向こうの世界に行ってもらうわぁ。ティアマトの意識が弱い今のうちに、しっかりと真木ちゃんをサポートしてあげてねん!』
次の瞬間、ミカエルは聖槍(ホーリーランス)を手に取り、オレに向けてきた。
「ちょっ・・・!!ミカエルさん、何を・・・!?」
オレが慌てて後ろに下がると、キョトンとした顔でミカエルが口を開いた。
『なに・・・って?だって、向こうの世界に行くには、アナタに死んでもらわなきゃ。もう何度か経験済みでしょ?うふっ』
「や、やっぱり死んだら向こうの世界に転移するっていう仮説は間違っていなかった・・・って、そんなことより、こんなことして、本当に天使かっ!?」
ミカエルは笑顔を崩さない。
『天使の役目は神の意志を遂行することよん。神の意志はティアマトの復活を抑えること。ということなので、がんばってね、芸満(ゲイマン)先輩♪』
「このっ!!!させるかっ!!!」
勇者がオレの前に立ち、ミカエルの攻撃を受けようとする。
ミカエルはお構いなしに、こちらに向かって聖槍(ホーリーランス)を放った。
ブオッ!!!!!!!
次の瞬間、勇者とオレは一直線上に聖槍(ホーリーランス)によって貫かれ、そこで意識は途絶えた。
vol24.へ続く