(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.021_降臨
「ぐおぉぉぉぉぉああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
オレは自分の声なのかも分からないほどの、抑えようのない咆哮をあげていた。
光の一閃(ライトニングバスター)の発動準備をしている勇者が、光り輝く剣を構えたまま茫然と見ている。
そして、それ以上に驚いているのは、他ならぬ目の前の敵であるレーヤだった。
レーヤはオレの姿を見て恐怖に満ちた顔をしている。
なんだ・・・!?オレに・・・何が起きている・・・?
体から噴出した負に満ちた強大なエネルギーは、やがて制御されたかのようにオレを包み、ゆらゆらと黒光りしている。
オレは自分の意志とは無関係に口を開いて言葉を発する。
『我が名はティアマト・・・古の戦いにて神に敗れ滅びた者・・・汝が身体に宿り此処に降臨せり。』
ティ・・・ティアマト!?
たしか、神話の中に出てくる神に滅ぼされた邪神の名前だ・・・オ、オレの身体を借りて、降臨した・・・だと!?
「わ、我らが魔王様、そして我ら僕(しもべ)が崇める神・・・ティアマト様・・・だと・・・!?そんなバカな・・・」
レーヤはオレ・・・もとい、ティアマトと名乗った者が纏うオーラの底知れぬ圧力に先ほどの勢いを失っている。
しかし、我を取り戻したかのように大声を上げ、オレ(ティアマト)に殺意をむき出しにしてきた。
「この愚か者めが!!!我らが魔王様も崇める神の御名を口にしおって!!!!許し難し許し難し許し難しぃぃぃぃぃ!!!!!魔王様直属の四天王レーヤが跡形もなく消し去ってくれるわぁぁぁぁ!!!!!」
レーヤの両手に強大なエネルギーが集まる・・・やばい!!こんなの喰らったら終わりだ!!!
「超暗黒爆裂破(ダークフレア)!!!!」
レーヤの渾身の魔法がオレ目掛けて飛んでくる・・・何これ・・・どこにでもいる平凡な賢者のオレなんかにここまでするか・・・?
オレが半泣き状態で諦めている中、ティアマトが乗り移ったオレの身体はゆっくりと手を伸ばし、超暗黒爆裂破(ダークフレア)を片手で受け止めた。
!!!!!?????
その場にいた、レーヤ、勇者がその光景に驚愕する。
もっとも、一番驚いているのはオレだ。
『この程度の力で、魔王の四天王と申すか。こうして戦うのは太古の昔より久しいが、準備運動にもならぬな。』
オレ(ティアマト)は、超暗黒爆裂破(ダークフレア)を自分のエネルギーとして吸収すると、今度はレーヤに向けて手を向け、人差し指をクンっと折り曲げた。
「ぶぎゃぁぁぁぁぁ!!!!!!」
オレ(ティアマト)がその膨大な魔力をレーヤに向けた瞬間、レーヤの身体はよじれ、身動きがとれない状態となった。
『勇者とやら。この愚か者を滅するなら今のうちだぞ。』
オレ(ティアマト)が勇者に大技を放つように促す。
勇者は驚いていたものの、気を取り直してレーヤに狙いを定め大技を放つ。
「光の一閃(ライトニングバスター)!!!!!!」
ズオッ!!!!!!!!!!!!
「くっそぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
レーヤの身体が光り輝く一閃に両断され、咆哮と共に滅した。
かくして、オレらは魔王直属の四天王レーヤを討伐した。
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
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レーヤが滅したことを確認し、勇者がオレの方に駆け寄ってきた。
「ちょ!賢者さん、マジでどうなってんの!?」
『・・・・』
オレに乗り移っているティアマトは、オレの身体から離れ、まるで幽霊のように透けた身体で具現化した。オレはその姿に茫然とする・・・
『驚かしてしまいすまないな。芸満(ゲイマン)先輩。』
その姿は、真木さんそのものだった・・・
vol22.へ続く