(小説ブログ)魔王より面倒!SEになった賢者さんvol.022_顕現
「ま、真木・・・さん??」
オレは頭が混乱していた。真木さんは、あちらの世界でファインダーシステムに勤めるシステムエンジニアだろ・・・?
なんで、こっちの世界で・・・しかも、神話に出てくる邪神ティアマトを名乗っているんだ・・・????
『結論から言うと、私は神との闘いに敗れ、この世界から滅した。そして異世界にて転生した姿が真木だ。』
ほぇっ!?
な、なんですと!?オレはズタボロになっている身体を起こしながら、神話に出てくる邪神の話に応答した。
「え、えっと・・・すみません・・・どこまで信じてよいのやら・・・という感じなんですが・・・」
『信じろという方が無理な話ということは承知している。だが、事実だ。』
淡々とティアマトは返答する。・・・オレは今、邪神と話をしているんだよな?
「わ、分かりました。その話が事実だとして、何故こちらの世界に現れて、しかもオレなんかを助けたんですかね・・・?」
オレの問いにティアマトはフッと笑い、ゆっくりと口を開いた。
『答える前に、まず言っておかなければならないことがある。それは、先ほども言ったとおり私はこちらの世界で滅した身。だが、転生した先の世界で真木という人間の魂の中に僅かではあるが私の意識が残存するができた。』
俄かに信じがたいが、嘘を言っているようにも見えない。邪神が転生して真木さんになったということは事実として認めた方がよいのだろう・・・
オレは邪神ティアマトの話に頷く。「彼女」は続けて話す。
『これを前提として、まず私がこちらの世界に顕現できた理由だが、貴公は真木が作ったクッキーを食べたな?このクッキーには真木の「貴公に食べてほしい」という強い念が込められている。』
『強い念は、無意識のうちに私の魂の一部をクッキーに宿し、それを貴公がこちらの世界で食べたことで念が解放され顕現することができたというわけだ。』
・・・さっぱり分からないが、要は真木さんが作ったクッキーにティアマトの魂が乗り移り、こちらの世界に戻ってきたオレの身体を媒介して顕現した・・・ということか?
『次に私が貴公を助けた理由だが、それはあちらの世界で真木が世話になっているからだ。』
「えっ・・・、どちらかというと世話になっているのはオレの方なんですが・・・?」
オレの反応を見てティアマトは、またもやフッと笑う。
『どう思おうが貴公の勝手ではあるが、真木は生まれて今まで、自分に自信が持てないで過ごしていた。特に今の会社に入ってからは、一層その想いが強くなったと見える。そのような中、貴公のサポートもあり、真木は少しずつ自分に自信を持てるようになってきた。』
そ、そうなのか?オレには全く自覚がなかったが、どうやら多少は真木さんの役に立っていたらしい。そして、真木さんとして転生した邪神ティアマトにもオレは一目おかれ、こうしてピンチを助けてもらった・・・ということか。
「ティ・・・ティアマトさま・・・って呼べばいいのかな?正直オレには真木さんを助けたという自覚はないが、今こうしてレーヤから町を守ることができたのは、あなたのおかげだ。オレの方こそ感謝します。」
『フッ、あくまで私は滅した身。残存する魂の一部を顕現させたに過ぎぬので、手を貸せるのもこの程度の力だ。そろそろ、こちらの世界で顕現できる時間も少なくなってきたが他に質問は?』
そうだ!そもそも、オレは何故あちらの世界に転生するようになってしまったのか?その答えを聞いておく必要がある。その質問をしかけた時、ティアマトが先を読んだかのように、話し出した。
『貴公があちらの世界に転生・・・というより転移した理由だが、こちらの世界を守護する神の仕業だろうな。』
「か、神!?」
オレが、そう反応した直後、空から巨大な槍が真木さん・・・の姿をしたティアマトに目掛けてぶち込まれた。
ずごぉぉぉぉぉんん!!!!!!!
巨大な槍が地面に突き刺さり、衝撃音が響き渡る。
ティアマトは真っ二つに引き裂かれ、その姿はカゲロウのようにユラユラと消えていく。
『ふん。私がこちらの世界に顕現したことを神が察したようだ・・・では、また会おう。芸満(ゲイマン)先輩。』
か・・・神っ・・・!?そう言い残しティアマトは消えた。
地面に突き刺さった槍は光に包まれ消えていき、天より翼の生えた何かが舞い降りてきた。
vol23.へ続く